大学入試の物理を学ぶにあたって part3
前回で物理学とは、自然の情報を圧縮する学問であるというお話をしました。
今回はその圧縮の手順を説明していきたいと思います。
これからお話しする内容から、入試問題に対してどのようにアプローチすればよいのかを知ってい頂きたいと思います。
物理では三段階に分けて情報の圧縮を行います。
まず初めに行うのが単純化・理想化です。
ほぼまっすぐな線であれば直線、小さい物体なら質点、少々凸凹していても大体平らなら平面、といった具合に、これから考える現象にほとんど影響しないようなことを無視、近似することで簡単なものにします。
何でもかんでも細かく考え出すと情報は無限にあって圧縮できません。
次に実験をしてデータを取ります。
例えば 1 3 5 7 ・・・ と続くデータが得られたとして、この数字は無限に続いていくため、これもまた無限の情報です。
ここで規則性に着目するのです。すなわち、「法則」の誕生です。
しかし、よくよく調べると 1 3 5 7 1 3 5 7 1 ・・・ となっているかもしれません。
実は「1 3 5 7」が繰り返される数列のようですが、もっと調べると違う規則性が見えるかもしれません。
これもまた無限の情報です。
なので、調べた範囲では(あるいは、――のような条件下では)規則が成り立つものとして考えることで情報を圧縮します。
自然科学の世界では、さらに研究を進めると違った事実が見つかるということはよくあります。
地球も初めは平面だと思われていたのが実は球だったのですから。
規則性を見出すことにより、無限の情報をいくつかの「法則」にまとめることができるのです。
しかし、法則もまた非常に多くの法則があります。
もうお分かりかもしれませんが、このたくさんの「法則」を圧縮します。
「法則をまとめた法則」、すなわち「法則の法則」を考えるのです。
この「法則の法則」が「原理」なのです。
このように、自然にある無限の情報を単純化・理想化 ⇒ 法則の発見 ⇒ 原理の発見をすることで数個の原理に圧縮するのが物理学です。
物理学の究極はすべての現象を1つの原理にまとめ上げることなのです。
大学入試の力学における「原理」は運動方程式です。
つまり、すべての力学の法則は運動方程式にまとめられるのです。
では、運動方程式を理解すれば、どんな力学現象もすぐに理解して説明することができるのでしょうか。
違いますね。
問題を解く、物理現象を考えるときは今まで行ってきた圧縮の逆の作業である「展開」を行います。
したがって、力学の問題は以下の手順で解くことになります。
①まず、力学の原理である運動方程式を立てます。
②つぎに与えられた条件(実験データなど)から、適切な法則を運動方程式から導きます。
③その法則(規則性)から物理現象を説明したり、予測したりします。
このような手順を踏むことで初めて「物理現象がわかった」といえるのです。
力学の問題で、なぜ運動方程式を立てるのかはこのことが理解できていれば、極々当たり前のことなのです。
これは解法として覚えるものではありません。
入試問題の解答に書かれているすべての式には立てる意味があり、解法暗記には何の意味がありせん。
今回は大雑把に力学を題材としましたが、電磁気学、波動、熱力学、原子物理にも、このように「なぜその式を立てるのか」を自分で気づけるようになるための考え方は存在します。
気になった方はぜひ大阪の個別指導の塾「講師会」の授業を受けてみると良いでしょう。物理は面白いですよ。