公開日: / 執筆:講師会
学校の授業や定期試験では解けていたのに、大学受験の化学で得点が伸びない。その原因を、すべて「暗記不足」や「計算ミス」で済ませていませんか。反応を捉えるところで止まる場合と、式は正しいのに数値を間違える場合では、復習する内容が異なります。
進学校に通う高校生、高3・既卒生が限られた時間で復習箇所を決められるよう、講師会から確認の手順を提案します。以下の計算例は本記事用の例で、入試問題の転載ではありません。
まず、解けなかった答案を見直す
最近の模試や過去問から、解説を見ないと解けなかった問題を選びます。答案を消さずに残し、最後に自力で書けたところと、最初に迷ったところに印を付けてください。
何が起きているか説明できない
反応する物質、反応後に残る物質、加熱や混合などの操作を言葉にできるか確認します。状況を捉えられないまま公式を探すより、問題文の条件を図や短い文に整理するところへ戻りましょう。知らない反応について問題文で説明されている場合は、与えられた情報も使います。
必要な量を選べない・式を立てられない
与えられた数値と求めたい量を、単位付きで書き出します。質量、溶液の体積、濃度、物質量を区別できているかを確認してください。「なぜこの数値を使うか」を説明できない場合は、計算だけ繰り返す前に、量どうしの関係を見直します。
式は合っているが、答えが違う
mLとLの換算、指数、分数、転記、有効数字の扱いを調べます。どこで間違えたか特定できたら、その操作を含む短い計算を解き直します。誤りの原因が単位換算なら、単に「ケアレスミス」と書くより「体積をLに直していなかった」と具体化すると、次に確認する場所が分かります。
時間をかければ解けるが、試験中に終わらない
条件の読み取り、立式、数値計算、見直しのどこに時間がかかるかを分けます。立式できるまでと、その後の計算を終えるまでの時間を記録すると、相談時の材料になります。速さを優先する前に、時間を外せば自力で正しく解けるかを確かめましょう。
中和の計算例:数字より先に反応の比を見る
次の例は、酸と塩基が完全に中和する量を求める計算です。薬品を使って実験する手順ではありません。
確認問題
0.100 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10.0 mLを完全に中和するために、0.100 mol/Lの塩酸は何mL必要でしょうか。
1.NaOHの物質量を求める
体積10.0 mLを0.0100 Lに直し、濃度に掛けます。
0.100 mol/L × 0.0100 L
= 1.00 × 10−3 mol
mol/LにLを掛けるので、残る単位はmolです。濃度と体積を掛けた結果を、そのまま体積だと考えないようにしましょう。
2.反応式からHClの物質量を求める
HCl + NaOH → NaCl + H2O
完全に中和するとき、HClとNaOHの物質量の比は1:1です。したがって、必要なHClも1.00 × 10−3 molとなります。
3.塩酸の体積に戻す
1.00 × 10−3 mol ÷ 0.100 mol/L
= 0.0100 L = 10.0 mL
この例では、たまたま酸と塩基の濃度が同じで、反応する物質量の比も1:1でした。「同じ濃度なら、必要な体積はいつも同じ」と覚えるのは避けてください。
条件を変えて確かめる
塩酸を0.100 mol/Lの硫酸に変え、NaOHの条件はそのままにします。硫酸の2個の水素イオンがともに中和されるものとすると、反応式は次のとおりです。
H2SO4 + 2NaOH → Na2SO4 + 2H2O
必要な硫酸の物質量はNaOHの半分、5.00 × 10−4 molです。これを0.100 mol/Lで割ると0.00500 L、つまり5.00 mLになります。
答えの数字だけでなく、酸の種類が変わるとどの関係が変わり、どの計算が変わらないかを説明してみましょう。反応式の係数比は反応する物質量の比であり、そのまま質量の比を表すわけではない点にも注意します。
解説を閉じた後、何を確認するか
解説を写したノートを作るだけでは、自分で方針を選べるかは確認できません。復習では、答えを思い出すことと、解答までの道筋を説明することを分けて考えます。
- 立式の理由を説明する。
「中和だから」だけでなく、どの物質をどの比で結び付けたかを言葉にします。 - 問題だけを見て解き直す。
解説を閉じ、単位と途中式も含めて書きます。見てしまった箇所があれば記録します。 - 同じ考え方を使う別の問題に取り組む。
濃度や物質の種類が違っても、使える条件と使えない条件を判断できるかを確かめます。 - 次の演習で再確認する。
一度正解しただけで完了とせず、後の演習でも方針を選べるか確認します。解き直す間隔は、定着状況と試験までの予定に合わせます。
記録は長文でなくて構いません。「間違えた箇所/原因/次回見る場所」の三つを残します。たとえば「硫酸も1:1で計算した/反応式を確認しなかった/酸の種類が変わったら係数を確認」と書けば、復習の目的が明確になります。
一方、先ほどの中和計算が解けても、平衡や反応速度の問題まで解けるとは限りません。計算例は確認の入口です。問題ごとに前提や使う関係式を確かめ、該当する教科書の範囲へ戻ってください。
高3・既卒生は、残り期間から復習箇所を絞る
志望校の最新の入試科目・出題範囲を確認し、模試や過去問の失点を並べます。問題集をすべて最初からやり直すのではなく、何度も立式できなかった単元、複数の問題で使う量の関係、自力で解けるのに計算で失点する箇所を分けて相談しましょう。
たとえば、物質量や濃度で繰り返しつまずくなら、その部分を確認してから関連する入試問題へ戻ります。難問を一問解くことだけに時間を使わず、他科目の学習時間も含めて優先順位を決めます。特定の期間で得点が伸びると一律に約束することはできません。
既卒生は前年の答案も見返してください。同じ単元で止まっているなら、教材を替えるだけでなく、解き直しで何を確認するかを変える必要がないか検討します。高1・高2も、定期試験の直後だけでなく、既習範囲を使う演習の機会を設けておくと、理解の抜けを確認できます。
化学の個別指導を相談するときに持参したいもの
- 解けなかった問題と、消さずに残した途中式
- 読んだ解説と、そこで分かったこと・まだ分からないこと
- 模試の成績表、志望校、学校で学習済みの範囲
- 現在の教材と、他科目を含む一週間の学習予定
「この問題を教えてください」に加え、「解説のここは分かるが、自力ではこの式を選べない」と伝えると、確認する箇所が具体的になります。途中まで正しく考えられている場合もあるので、誤答を消して正解だけに直す前の答案を残しておきましょう。
大阪・桜川の講師会では、化学を含む大学受験の少人数個別指導を行っています。現行の化学授業では、知識を関連づけて理解することを重視しています。化学の授業内容・開講科目、人数別の授業料(税込)をご確認ください。受講形式で迷っている場合は、個別指導と集団授業の比較ガイドも参考になります。
参考資料と本記事の位置付け
学習上の基礎事項を確認するため、以下の教育機関の公開資料を参照しました。計算例と復習の確認項目は本記事として作成した提案であり、各機関による監修や推奨を受けたものではありません。
- 河合塾「これから始める化学(入門編)―『モル』ってなんだ?!―」:物質量と反応の量的関係の位置付けを参照。過去の講座案内であり、掲載日程への募集を案内するものではありません。
- 四谷学院「化学の正しい勉強法」:知識・計算・問題文の理解を分けて確認する考え方を参照。
資料確認日:2026年10月26日。学習の進め方は本人の理解度や志望校によって異なります。本記事は特定の得点上昇や合格を保証するものではありません。